地ビールのはなし |
地ビールというと、それぞれの地方で、その土地の稔りを活かして造られるビールのように思いがちですが、ここで地ビール誕生の歴史について紐といてみましょう。
以前 ビールは、酒税法という法律で年間最低製造量が2000KL(キロリットル)以上でないとビールを製造することができませんでした。よって、国産ではキリン、アサヒ、サッポロ、サントリーの4社の寡占状態が続いていました。そこへ、1994年(平成6年)4月に酒税法改正による規制緩和が行われ、年間最低製造量が一気に60KLに引き下げられました。これにより、小規模業者でも市場に参入することが可能になりました。そこで、年間製造量が2000KL未満の醸造所(大手4社以外)が造るビールのことを、『地ビール』と呼んでいます。
地ビールは、その地方、水、原料、製造法などの違いにより、個性豊かなビールが造られます。製造業者にも様々なこだわりがあり、従来の大手メーカー系の喉越しの良さを追求した単一的なビールとは全く異なり、様々な風味や味と出会うことができます。まだ飲んだことのない方は、是非、一度お試し戴きたいと思います。
ビールの主原料は、大麦及び小麦からできる麦芽と、ホップ、酵母、水です。日本では、副原料として米やコーンスターチなどがよく混入されており、酒税法では、麦芽が原料の内の67%以上でないと「ビール」と認められてはおりません。 ちなみに、副原料が34%以上含まれている場合、酒税法では「発砲酒」と呼ばれ、以前は、ビールに比較して税率が低く設定されていました。1997年10月の酒税法改正により、「発砲酒」であっても、麦芽の含有量が50%以上だとビールと同税率となり、一部発泡酒の事実上の税率アップとなりました。
ビールに課せられる酒税は、1KL(キロリットル)当たり220,000円です。これを350ml缶で換算すると77円につくので、1缶230円とするとなんと33.5%が税金という計算になります。ついでに、500ml缶で換算すると110円となり、1缶300円とすると36.7%が税金として占めています。
おまけに、以前から二重課税で問題視されているガソリン税と言うのがありますが、この酒税についても、同じく二重課税になっています。我々は、ビールを買うときに、ビールの価格の30%以上を占める酒税に対してもさらに消費税を払っている訳です。ちなみに、個人的なことで恐縮ですが、我が家はガソリン税と酒税の消費比率が高いので、こんなこともつい気になってしまいます。
話は少し脱線しましたが、ここで言いたかったことは、よく「地ビールは高いから」とおっしゃる方がいらっしゃいますが、上記税率を考えれば、300mlグラスで400~500円する地ビールだって結構頑張っているのです!!そこのところも理解した上で、ブルワーさんの心を呑むつもりで、ゴクゴクやって戴きたいと思います。
酒税法改正による規制緩和以降、地ビールがブームとなり、各地に200軒を超えるブルワリーができましたが、2000年を過ぎると、「価格が高い」、「美味しくない」、「小規模経営」などの理由から淘汰される醸造所も数多くでてきて、地ビール市場全体が低迷しました。
近年、ブームの再来とも言える盛り上がりを見せ始めてきましたが、第一次ブームとは様相が変わってきており、以前は各地域に乱立していたのに対して、本来あるべき美味しいビールを作るブルワリーが生き残って本物志向になってきたと思います。それにあわせて、呼び方も「地ビール」から「クラフトビール」へ変わってきました。
「クラフトビール」とは、「手造り」とか「手工芸品」という意の「クラフト」(Craft)とビール(Beer)をあわせた言葉で、欧米など海外では小規模醸造者の造るビールを表わす呼び方として定着しています。そうしたことからも、レベルが高い海外のブルワリーに近づいたということから、従来の品質にバラツキがあった頃の「地ビール」に対して、「高品質」、「本当に美味しい」という形容詞のつくビールのことを「クラフトビール」と呼ぶようになってきたのかもしれません。
まぁ、単純に考えれば、「地ビール」より「クラフトビール」と呼ぶ方がカッコ良く聴こえることもあり、一皮むけたと考えられなくもありませんが。